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【鉄道車両基礎講座】 その5 架線電圧と車両の運用

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 ↑ 直流電化の電圧は、JRや大手私鉄の多くは1500Vを採用しています。

電圧について

前回は豆電球と乾電池を使った実験を例として、電流や回路について説明しました。

豆電球の導線を乾電池のブラスとマイナスの極に付けると、電気が流れて豆電球の明かりがつきます。

このとき、電気を流そうとする力(電気を押し出そうとする力)が発生していますが、この、電気を押し出そうとする力のことを「電圧」と言います。

電圧の単位は「V」(ボルト)です。

電圧は電源によって異なりますが、通常よく使われるアルカリ乾電池は1.5Vで、四角のアルカリ乾電池は(9V形)は9V、自動車用のバッテリ(鉛蓄電池)は12V(2Vバッテリ6個の組み合わせ)となっています。

乾電池と豆電球の実験では、乾電池から1.5Vの電圧がかかり、回路に電流が流れたということになります。

 

直流電化区間と電圧

電化区間を電車が走る場合は、変電所〜電車〜変電所という形で、電気的な回路が構成され、変電所から流れた電気は変電所に戻ります。

このことは前回の記事で説明しました。

このとき架線に電気を送るためにかけられる電圧は、日本の直流電化区間では600V、750V、1500Vなどを採用しています。

この電圧については、直流においては750Vを超えるもの「高圧」、750V以内のものを「低圧」と定義されています。

同じ架線の条件下であれば、電圧が高いほうがより多くの電気を流せるので、列車本数を増やしたり長編成の列車を運用することができますが、高圧の電気の扱うため、それなりの設備とコストがかかります。

また、電化線路は電気工作物でもありますので法規制の対象となります。

架空電車線方式により敷設され使用電圧が高圧のものは、電気鉄道の専用敷地内に施設しなければなりません。

そのようなこともあり、併用軌道(路面電車など道路上に敷設された軌道)の専用敷地外では、基本的に低圧が採用されています。

例外としては、京阪電気鉄道京津線浜大津駅付近の併用軌道区間が有名で、ここでは高圧の1500Vとなっています。

直流電化で採用される電圧の中で主流となっているのは高圧の1500Vで、JRや大手私鉄など、多くの路線がこの電圧で運用されています。

一方、経費を押さえる為に低電圧を採用している路線も地方私鉄や地下鉄、路面電車などに多数あります。

例えば、箱根登山鉄道(箱根湯本-強羅間)や遠州鉄道四日市あすなろう鉄道三岐鉄道北勢線伊予鉄道横河原線郡中線などは、750Vで電化されています。

また、伊予鉄道高浜線江ノ島電鉄線・静岡鉄道・北陸鉄道石川線叡山電鉄銚子電気鉄道線えちぜん鉄道福井鉄道筑豊電気鉄道熊本電気鉄道などは、600Vで電化されています。

 ところで、電車は走行できる架線電圧が決まっていますので、鉄道会社はその路線の電圧に合った電車を導入しなければなりません。

750V用の電車は、同じ直流であっても架線電圧1500Vの区間は走行できません。

銚子電鉄では、 老朽化した車両の代替えのため、2008年と2009年に京王3000系を種車とする車両の導入を検討していました。

しかしながら、種車は直流1500V対応車であり、導入にあたっては600V仕様への降圧対策工事が必要となり、工事費用が予算オーバーとなることから頓挫し、銚子電鉄線と同じ600Vで運用している車両(800形)を伊予鉄道から譲り受けました。

その後、同鉄道に増備された車両も伊予鉄道からの譲渡車で600V対応車です。

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 ↑ 銚子電鉄は、使用電圧が600Vであることから、同じ600V対応車を伊予鉄道から購入しました。

 

架線電圧の昇圧と運用車両

現在、1500Vの高圧で電化されているJR(国鉄)や大手私鉄などは、その多くが最初は600Vなどの低電圧で電化され、後に列車の高速化や長編成の為に高電圧に変更されました。

このように、架線電圧をより高く変更することを昇圧といいます。

昇圧を行うには、電化設置の更新や改良工事が必要となりますが、同時にその路線で使用する車両も変えなくてはなりません。

福島交通飯坂線では、開業以来ずっと750Vの架線電圧で運用してきましたが、1991年に1500Vに昇圧しました。(昇圧とは、電圧を上げることです。)

このとき、従来使用していた750V用車両は昇圧後には使用できなる為、新たに東急から1500V対応車(7000系)14両を譲り受け、在来車を一掃しました。

上田電鉄上田交通)別所線や豊橋鉄道渥美線なども同様で、架線電圧を昇圧した際に、従来車が新しい電圧に対応していない為廃車し、全て新しい車両に置き換えました。

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↑ 1991年の昇圧時に保有車両を全て入れ替えた福島交通。 

 

複電圧車について

上記では「電車は走行できる架線電圧が決まっている」と説明しましたが、異なる複数の架線電圧下で対応できる電車もあり、これを複電圧車(又は複電圧電気車・複電圧電車)と呼びます。

この電車を導入する目的としては、異なる電圧の区間を走行する場合や、ある電化路線で昇圧を実施する際に既存の運用車で電圧の切り替えを一斉に行う場合があります。

直流電化においては箱根登山鉄道の車両が該当します。

営業運転を行う箱根湯本-強羅間は750V区間ですが、車庫のある入生田駅小田急の車両が営業運転を行う小田原-箱根湯本間にあり1500V区間となっている為、この鉄道の車両は全て750Vと1500Vの複電圧車となっています。

昇圧に対応するために複電圧車を導入した例としては、過去には京王電鉄京阪電気鉄道阪急電鉄阪神電気鉄道などでその事例がありました。

なお、東京メトロの銀座線・丸の内線 は、現在600Vで運用されていますが、今後750Vへの昇圧が予定されています。

銀座線は現在運用中の1000系を一部の部品を交換することで対応、丸の内線のは昇圧対応車を新製して既存車を置き換えることになるそうです。

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 ↑ 複電圧車ではないが、銀座線1000系は将来の昇圧時には一部の部品を交換するだけで対応可能。