「鉄道車両基礎講座」というテーマでこの連載を進めていますが、今回の内容は、鉄道車両のテーマから外れ、少し馴染みにくいかも知れません。
前回までの説明の中で、「電流とは電気の流れる量のこと」と定義しましたが、「電流」や「電気」について、もう少し深く掘り下げて理解を深めます。
いきなり難しい物理学の話になりますが、我慢してお付き合い下さい。
電荷とクーロンの法則
まずは、中学校の理科の授業で出てきた、「分子」とか「原子」の話から説明します。
この宇宙にあるすべての物質は、「原子」からできています。
例えば、「水」という物質は、水分子(H2O)から出来ています。
この水分子は、水素(H)という原子が2つと酸素(O)という原子1つが結合したものです。
鉄という物質は分子は持たず、鉄(Fe)という原子が集まったものです。
原子は、「電子」や「陽子」・「中性子」といった粒子で出来ています。
これらの粒子を「素粒子」と言います。
素粒子は物質を構成する最小の単位で、「電荷(でんか)」という電気的な性質を持つものがあり、これが全ての電気現象の根本となっていると考えられています。
(電荷量(電荷の大きさ)や電荷を持つ素粒子のことを、単に「電荷」と呼ぶときもあります。)
電荷には「正電荷(+)」と「負電荷(-)」という2種類があって、この2つの異なる電荷を持つ素粒子は互いに引き合っています。
この引き合う力の大きさを「電荷量」といいます。
素粒子の中では、電子は負電荷、陽子は正電荷を持ち、中性子は電荷を持ちません。
そのため、電子と陽子はそれぞれお互いを引き合っていて、その引き合う力はお互いの距離が近い程強くなり、その電荷量が大きい程、強くなります。
この引き合ったり離れたりする性質を「クーロンの法則」と言い、その力を「クーロン力(静電気力)と言います。
なお、電子と陽子は引き合っていますが、陽子は電子の1836倍も重たいのでほとんど動きません。
実際に動くのは負電荷をもつ電子です。
電気と自由電子
ところで、原子の構造についてですが、原子の中心には「原子核」というものがあり、陽子と中性子はこの原子核の中にあります。
そして、原子核の周りを電子がぐるぐると回っていて、多くの物質では、陽子の数も電子の数も一定です。
ところが、電子の中には何らかの理由により、この軌道を離れてしまうものがあるのですが、このような電子を「自由電子」と呼びます。
「電気」とは、この自由電子の動きであると考えられています。
例えば、架線の中を自由電子が移動すれば、それが電気の流れ(電流)となるのです。
電子の動く原動力は、電子の持つ電荷です。
負電荷(-)を持つ電子(自由電子)は、クーロンの法則により正電荷(+)を持つ素粒子に引きつけられますので、電子はマイナス(-)からプラス(+)に流れます。
一般常識的には、「電気はプラスからマイナスに流れる」ということで、小学校でもそのように習いましたが、実際の動きはその反対で、電子はマイナスからプラスに流れます。
とてもややっこしいことです。
電気についての研究が始められたのは、1800年頃といわれていますが、ボルタという人が電池を作ることに成功し、「電気はプラス極からマイナス極に流れる」と定義されました。
電子の正体が明らかなったのはそれから100年後のことですが、すでに「電気はプラス極からマイナス極へ」という考えて方が世の中に浸透していたため、このようなややっこしいことになったそうです。
電流とその単位
ところで、以前の講座の中で、「電気の流れる量のことを電流という」と定義しましたが、具体的には、「電流とは、素粒子(電子)の持つ電荷の流れる量」のことを指しています。
電流の単位は「アンペア(A)」です。
アンペアの定義は、正確には専門用語が多く難しすぎるのですが、
「1A(アンペアは、ある定められた面積のところを1秒間に1Q(クーロン)の電荷が通過した量」と理解してよさそうです。
Q(クーロン)というのは電荷の単位です。
電子は1個あたり、1.6 × 10-19Q(クーロン)の電荷持っていますので、1Aあたりでは、 1 ÷ 1.6 × 10-19 = 6.25 × 1018 個の電荷が流れていることになります。
これ以上の詳細は専門の方にお任せするとしても、1Aの電流でも莫大な数の電子が流れているいうことを理解しておけば良いかと思います。