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【鉄道車両基礎講座】 その15  抵抗制御

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↑ 現在も西武鉄道に残る101系が抵抗制御方式です。(写真は263編成)

前回までは、近年まで電気車(電車や電気機関車)の主電動機として標準的に使用されてきた直流電動機について、説明しました。

今回からは、その直流電動機の速度制御などについて、深く掘り下げていきます。

力行と惰行・制動について

乗用車を運転する場合、停車している自動車を動かすときは、オートマチック車であれば、チェンジレバーをドライブモードに入れ、エンジンを駆動系部分に接続します。

また、アクセルを踏むことで、エンジンの動きが活発になり車が加速します。

電車でもこれに相当する動きがあり、このことを「力行」といいます。

すなわち、「力行」とは電車や機関車などのモーターやエンジンの動力を車輪(駆動輪)に伝え加速すること、または上り勾配で均衡速度を保つことをいいます。

これに対して、運動エネルギーを熱エネルギーや電気エネルギーに変換して車両を減速させることを「制動(またはブレーキ)」といいます。

また、力行でも制動でもなく、車両が惰性で走行することを「惰行」と言います。

惰行では、平坦な路線を走行する場合はほぼ一定の走行を保つことができます。(厳密には、列車抵抗のために少しずつ速度は低下していますが。)

一般的な列車の運転では、駅を出発してからは力行によって一定の速度まで加速し、その後は惰行運転を行います。

惰行運転で、速度が低下したときは、再度力行を行い、下り勾配やカーブ手前、その他速度制限に合わせて制動と力行によって列車速度を制御します。

そして、次の停車駅に近づくと制動により速度を落とし、駅に列車を停車させます。

通常、力行は主幹制御器(「マスターコントロール」=「マスコン」)についているハンドル(主幹制御レバー)の操作によって行われます。

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上の写真は西武101系クモハ266の運転席の様子です。

左右にそれぞれ1つづつハンドルがありますが、このうち向かって左側に設置されているハンドルが「マスコンハンドル」(主幹制御レバー)です。

因みに、右側にあるレバーは「ブレーキハンドル」で、写真のようにマスコンハンドルとブレーキハンドルが別々に設置されている(ハンドルは計2つ)運転台を2ハンドルといいます。

かつての車両はこのような2ハンドル車が主流でしたが、最近の車両はそのほとんどがマスコンとブレーキハンドルを一体構造とした「ワンハンドルマスコン」タイプとなっています。

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上の写真は、マスコンハンドルを拡大したものです。

先端が丸い茶色になっている大きいハンドルが、マスコンハンドルです。

マスコンハンドルの左側にある小さなハンドルは「前後進ハンドル」です。
マスコンハンドルには 「キザミ(目盛り)」がありますが、これを「ノッチ」といいます。
電車の場合は、主電動機に送る電気を段階的に制御することで速度を調節しますが、その段階が「ノッチ」ということになります。
主幹制御レバーの操作では、運転手は「1ノッチ」→「2ノッチ」→「3ノッチ」といった感じで操作します。
レバーを最大位置に入れる場合を「フルノッチ」と呼びます。
目的の速度に逹すると、列車は加速をやめて惰行運転に移行しますが、このことを「ノッチオフ」といいます。

抵抗制御の基本的な仕組み

ところで、前回までの説明で記載したとおり、電気車の動力とその制御方式は、近年まで抵抗制御と直流直巻主電動機の組み合わせを基本に発展してきました。

電気車が停止状態から動き出す際、架線などから取り入れた電気の電圧をそのまま作用させると、過大な電流により電動機が焼損したり、過大なトルクを発して車輪が空転を引き起こしてしまいます。

そこで、抵抗制御方式では、主電動機の前に複数の抵抗器を主電動機と直列に配置し、段階的に抵抗を電気回路から外し電圧を引き上げることによって、力行時の電気車の加速を制御します。

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上の図は、抵抗制御方式における例で、実際はもっと複雑ですが、説明を分かりやすくする為に簡単な図としました。

(番号や記号は、正式なものでは、なくこちらで適当に考えたものです。)

この例では、架線から取り込んだ電気が主電動機に至るまでの間に、R1からR4までの抵抗4つを直列に配置し、さらにその抵抗を迂回するルートも設けています。

抵抗を迂回するルートには、それぞれS1からS4までのスイッチがついていて、そのオン・オフの切り替えによって、電気の流れる抵抗値の制御できるようになっています。

抵抗制御方式においては、抵抗値の切り替えを行うことを「進段」といいます。

機関車では、機関士が電流計を見ながら手動で操作しますが、電車では制御装置が電流値を検出して自動進段する方式が主流です。

1ノッチずつ進段した場合の抵抗制御の動きは以下のとおりです。

始動時(1ノッチ進段)

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電車が停止の状態から動き出すとき、運転手は前後進ハンドルを前進に入れて、ブレーキを解除、マスコンを力行1ノッチに進段します。

このとき、S1からS4までのスイッチはすべてオフになっており、電気は全ての抵抗を経由するため、主電動機にかかる電圧(印加電圧)は非常に低い値となっています。

2ノッチ進段

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電車が動き出した後、ノッチを進段させて電車を加速させることになりますが、2ノッチに進段すると、S1のスイッチがオンとなります。

電気は抵抗R1を経由しなくなりますので、全体としての抵抗値が下がり、主電動機にかかる印加電圧が上昇し、主電動機の回転が速くなります。

3ノッチ進段

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更に電車が加速を行うために3ノッチに進段すると、S1に加えてS2のスイッチがオンとなります。
電気は抵抗R1とR2を経由せずに流れ、主電動機の印加電圧2ノッチよりも値が高く、回転数も速くなります。

4ノッチ進段

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同様に、4ノッチに進段すると、S1・S2・S3のスイッチがオンとなり、電気の流れる抵抗はR4のみとなります。

5ノッチ進段

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今回の例では、5ノッチではS4を含む全てのスイッチがオンとなり、電気は抵抗器を経由せずに主電動機に至るので、印加電圧は最大となります。

抵抗制御方式では、架線から取り込んだ高圧の電気エネルギーを抵抗器により制御します。

抑制された電気エネルギーは熱エネルギーとなり放出されますので、進段せずに抵抗器に電気を流し続けると、過熱して機器の損傷につながります。

その為、力行時にはできるだけ短時間で進段し、電気車が必要なスピードと主電動機の回転数を得た後は速やかに惰行運転に移行することが必要です。