CHIBA TRAIN NET

鉄道車両に関する記事・鉄活動記録の他、模型の紹介なども掲載していきます。

【鉄道車両基礎講座】 その17  弱め界磁制御

f:id:chibatrain:20190526161041j:plain

↑ かつての抵抗制御車では、直並列・組み合せ制御と合わせて、弱め界磁制御も行っていました。写真は鉄道博物館に静態保存中の101系。

前回まででは、抵抗制御・直並列組み合わせ制御について説明しました。

抵抗制御の電気車では、抵抗制御・直並列組み合わせ制御の併用により、電動機の印加電圧を引き上げ、列車の速度を上げます。

しかしながら、抵抗制御が最終段に達し印加電圧が最大に達してしまうと、それ以上は主電動機の回転数を上げることができず、列車のスピードアップの妨げとなつてしまいます。
この原因となっているのは、主電動機を動かすときに発生する「逆起電力」と呼ばれるもので、通常はこれを回避するために「弱め界磁制御」と呼ばれる手法が用いられます。
この「弱め界磁制御」の説明では、その前に「逆起電力」についての理解しておく必要があります。

逆起電力について

「逆起電力」というのは、主電動機(モーター)を回すと発生する、電流とは逆向きの電力のことです。
通常、電気を発生させる場合は発電機を用いますが、このうち直流発電機は直流モーターと基本的には同じ構造であることから、直流モーターを使って発電をすることができます。

具体的には、モーターの軸(回転子=電機子)を回すと電力が発生します。

例えば、電池式のモーターに電池を接続した場合、当然ですがモーターの軸は回転します。

f:id:chibatrain:20190504175739j:plain

次に、電池の代わりに豆電球をつなげて手で軸を回転させると、豆電球が点灯し、モーターが発電機となって電気が流れたことが分かります。

f:id:chibatrain:20190504182825j:plain

問題は、モーターの軸を回して発電される電力は、通常モーターの軸を回すために電流を流す向きとは逆方向であるということです。

この現象は、「レミング右手の法則」で説明できます。

以前、直流電動機の説明の中で、「フレミング左手の法則」について触れましたが、左手の法則が電動機(モーター)を回す法則であるのに対して、右手の法則は「発電機で電気が発生する」法則です。

f:id:chibatrain:20190504185350j:plain

レミング右手の法則では、右手の親指・人差し指・中指をそれぞれ直角に開いたとき、親指が力の方向、人差し指が磁束の方向、中指が起電力の方向となります。

左手の法則と比較した場合、電気の流れの方向が全く逆になります。

直流電動機の簡単な仕組みについては、以前も以下のような図で説明しましたが、回路にプラス(左方向)からマイナス)方向へ電流を流すと、コイル(電機子)は反時計回りに回転します。

f:id:chibatrain:20190504192643j:plain

電動機に電流を流さずに停止させた場合、界磁が永久磁石であればこの状態でもN極からS極に向かって発生しています。

f:id:chibatrain:20190504193612j:plain

この状態で、コイルを上記のように反時計回りに手動などで強制的に回転させると、レミング右手の法則により、電機子電流(回路に電圧をかけて流す電流)とは極性(プラス極とマイナス極の向き)が全く逆向きの電力が発生してしまいます。
これが「逆起電力」です。

f:id:chibatrain:20190526113324j:plain

力行時における逆起電力の増加

列車の停止状態からの車両を動かすとき、速度変化と電圧制御については、以下のとおりとなります。

列車の始動時は、高い印過電圧をかけると過大電流が流れてしまうため、低い電圧をかけて電動機を始動させます。
このとき、電機子の回転速度も遅く、逆起電力は小さいためほとんど問題になりません。

f:id:chibatrain:20190526123037j:plain

やがて、回転速度が上がってくると、電機子の逆起電力が増加し、通常(駆動電力)の電流を打ち消すため、トルク(電機子を回転させようとする力)が減少します。

f:id:chibatrain:20190526124712j:plain

そこで、印加電圧を上げて、駆動電力(電機子電流)を増やしトルクの低下を防ぎます。
具体的には、抵抗制御・及び直並列組み合わせ制御により、電機子の回転速度を上げ列車のスピードアップを行います。

f:id:chibatrain:20190526130332j:plain

しかしながら、抵抗制御・直並列組み合せ制御が最終段に達すると、電動機の印加電圧は最大となり、これ以上の電圧向上ができなくなります。

f:id:chibatrain:20190526131036j:plain

直巻電動機では電機子と界磁を直列としていることから、印加電圧の増加により磁界の力も強くなることもあって、逆起電力は増大し回転速度を上げることができません。

弱め界磁制御

弱め界磁制御では、電圧の制御ではなく、界磁の力を弱める(N極からS極に発生する磁束を弱める)ことで、駆動電力(電機子電流)を確保し、回転速度を上げます。

f:id:chibatrain:20190526132954j:plain

その際、界磁電流の一部を短絡したり、別回路に流したりすることで界磁の力を弱めています。

f:id:chibatrain:20190526140754j:plain

f:id:chibatrain:20190526141916j:plain

なお、界磁電流をゼロにしてしまうと電機子は回転しなくなるため、ある程度の界磁電流は確保する必要があります。

一般には、全界磁(弱め界磁を用いない状態)の35%程度まで弱めることが限界だそうです。(更に25%まで弱める方法もあるそうですが、ここでは割愛します。)